男心と春の空
結局俺と樋川は一滴も酒を飲むことはなく、野山が三本全部空けて一人で酔っ払い、樋川のレポートも終わった頃には気持ちよさそうに眠りについていた。

「野山、面白いよな。」

プリンターで印刷したA4サイズの紙の角を揃えながら樋川が言う。

「お前ずっと笑い堪えてただろ。いくら野山でもさ」

野山の味方になってあげようとしたが、樋川が「おい、これ」と机の中から何かを取り出したので言葉を続けるのをやめた。

樋川が取り出したのは野山と元彼女のプリクラ。

それを見るなり俺は口元が緩み、樋川は本人がすぐ近くにいることを気にすることもなく腹を抱えて笑う。

「よく野山なんかと三年も付き合ったよ。きみ。きみ、すごいよ。」

樋川はプリクラに映る彼女をマジマジと見ながら言う。

プリクラの中の野山は俺たちが見たことないほどに爽やかでまんべんの笑みをしている。

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