男心と春の空
「そういえば樋川、いつこの話聞いたの。」

俺は気になっていたことを聞いた。

樋川は少し考えて「テスト期間中に相談されたんだよ。」と答えた。

「図書館でいきなり泣き出して、面倒臭いのなんの。毎日のように電話かけてきては泣いて。だから別れたのがテスト明けでよかったよ。今日まで会ってなかったし。たぶん今回は俺の方が成績いいんじゃないかな。」

樋川は淡々と話しながら、紙の角をホッチキスで挟む。

野山はこういう奴だ。

全てにおいて一生懸命で努力家。

要領とか一切考えない(もともとないに等しいのかもしれないが)。

恋愛も勉強も全力投球。
恋愛はこの一年で何度も別れ話を切り出され、それをどうにかして何とか食い止めてきた。

もともと生真面目な性格で、授業も欠かさず出るしノートも取る。

俺達の代返もしてくれる。

それでいて成績は俺よりも下、樋川と同レベルだからかわいそうなのだ。

一方、樋川は俺と同じ附属高校出身で、高一からの友達。

同じ学科で付き合いも長いから一番仲がいい。

高三でも同じクラスで、浜田と樋川という名字のおかげで席も前後だった。

その頃から今でも毎日一緒にバカやって過ごしている。

でもやっぱり附属校に入れて内部進学できただけあってただのバカじゃない。

顔もいいし、ノリもいいから誰からでも好かれるタイプだ。
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