男心と春の空
カフェのバイト自体いつもと変わりなかったが、あっという間に時間が早く過ぎた。

ずっと頭の中はアキナだけだった。

ずっと考えていた。
こんなの久しぶりの感覚だ。

考えてみると高校は男子校で出会いもなかった。

合コンは何度かしたがいつもパッとせず。

樋川は合コンからうまいことコマを進め、ちゃっかり高校のうちに四人と付き合ったが、俺はゼロ。

バレンタインデーに駅のホームでチョコを貰うこともあったけど、貰ったらその後電車で見つける度に気まずいし、もらわない方がマシだと思わせるような相手ばかりだった(最低。)。

理想が高いわけではない。

樋川のような貪欲さが足りないのだと思う。

正直、彼女なんて努力しなくてもできると思っていた。

でも少なからず努力は必要で、努力もせずに向こうから近付いてくる女にいい女はいない。

文化祭で声かけた子と遊んだことがあったけど、全く盛り上がらず三回ほど遊んだだけで何もなかった。

高校はそんなことの繰り返しで終わった。

大学に入りバイトも始めて女の子と話す機会も増えたが、今、特別仲のいい子がいるわけでもない。

合コンも増えたけど、なんかダメだ。

かわいい子は全員樋川に取られるのだ。

俺が好きになった子からはメールの返事が来なくなり、知らないうちに彼氏ができている。

それがたまに樋川だったりする。
そんなもんだ。

ふと気が付けば、アキナのように気を使うことなく楽しく話せる子はできずにいる。

俺は中三の時点で止まったままなのだ。

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