男心と春の空
バイトを終え、電車、地下鉄を乗り継いで帰ってきた。

その間も頭の中はアキナのことばかり。

これって恋なのかなあ。

でも中学の時のアキナだよ?

そうは思うけど、どう考えても好きになりかけている俺がいる。

俺はフラフラとコンビニに入った。

期待通り今日も八重島はいた。

客が一人いたお陰で珍しくちゃんと働いている(ように見える。)。

しかし俺に気付くと即座に「はまちゃんじゃん。」と特有のニタニタした笑顔で声かけてきた。

俺はレジまで近付いて話し始める。

「あのさ、須賀アキナっていたじゃん。」

八重島は眠そうな顔して考えた。

そしてピンとこないような声で「あぁ、あぁ。」と怠そうに続けた。

「あの斎藤の元カノね。」

八重島はなぜか俺を指さしている。

「うそ。斎藤と付き合ってたの。」
「中学校卒業してすぐ斎藤が告白して高一の秋まで付き合ってたよ。あと高三の時は俺の仲の良い先輩とも付き合ってた。で、須賀アキナがどうかしたの。」

ショックを受けているのが自分で痛いほど分かった。

まったく何も知らなかった。

そりゃ彼氏くらいいたよな。
俺じゃあるまいし。

でもあの斎藤と?

「いや、さっき会ったから。忘れかけてて。」

俺は精一杯の思いでそれだけ答えた。

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