男心と春の空
三月の寒さの中に春の兆しを感じ始めたような、穏やかな晴れの日。

弥生ちゃんと俺は駅裏にある静かな美術館内の公園で、お茶を飲んでいた。

桜がもう少しで咲きそうな赤をしている。

「全然モテないんだ。」

弥生ちゃんが首を傾げながら言う。

「片思いばっかり。好きな人に好かれたことないな。」

そう言う弥生ちゃんと目が合う。

「俺好きだよ。」

俺の口からこぼれ落ちた。

それが告白となった。

ごく普通の会話。
自然に出た言葉だった。

「あたしも好き。」

弥生ちゃんがすごく恥ずかしそうに言って笑う。

「付き合おっか。」

俺から言うと、弥生ちゃんは笑って頷いた。

自然に出た言葉だったけど、やっぱり照れ臭い。

春が見え始めていた三月の終わり。
もうすぐまた大学生活が再開しようとしている。
< 32 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop