男心と春の空
アキナとその仲間が目の前から去ると、すぐに樋川が俺をつつく。

「はまちゃん、浮気だな。」
「ちげえよ。」
「だれだれ、今の子。めっちゃかわいい。」

樋川が顔を近づけてくる。
野山も気になってはいるようだ。

「地元の。」
「はまちゃん、ズルいぞ。俺の地元にあんな美人いなかったぞ。」

そんなに美人かなあ。

俺はチラッとアキナの後ろ姿を見る。

と、ふわりとアキナが振り向いてこっちを見た。

やべっ。

動揺する俺の気持ちとは違って、アキナはまた歯を見せて笑うとすぐ友達の方を見た。

「あの子、はまちゃんに気がない?」
「えっ!?」

樋川の一言に思わず大きい声を出してしまった。

「めっちゃかわいいよね。」
「そうか?」

俺は中三の頃と同じテンションで返す。

「ま、はまちゃんには弥生ちゃんがいるから、な。」

俺の肩に、ポンッと置かれる樋川の手。

野山がジリジリと睨んでくる。

そう、俺は弥生ちゃんと絶賛交際中の身だ。
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