男心と春の空
教室のど真ん中あたりに、すでに野山と樋川が座っていた。

俺は通路の階段を降りながら、そこを目指す。

アキナたちはどこに座ってんだろう。

あまりにも人数が多くて簡単には探せない。

「おはよう。」

俺は野山と樋川に声を掛けた。
二人は振り向いて、俺の背後に弥生ちゃんがいることに気付く。

「おー、はじめまして。弥生ちゃんだよね?」

樋川がすぐに反応した。
弥生ちゃんが俺の背後からちょっと身を出す。

「はい。」
「お前、彼女授業に連れてくるなんて、すげえことやるな。」

樋川が俺を冷やかす。

俺は適当に頷いて椅子に腰を下ろして、隣に弥生ちゃんを座らせた。

さりげなく教室を見渡す。

と、すぐに遠い斜め後ろの方にアキナたちの集団が見えた。

うわ、後ろか。

視線が気になる。
そんなに俺のこと見てないだろうけど。

と、ふとタイミングよくアキナと遠い距離を挟んでバチッと目が合う。

慌てて目を逸らして前を向いた。

隣から弥生ちゃんの手が俺の手に重なる。

ああ。
なんだろう。

すごくモヤモヤする。
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