男心と春の空
高松雄介
10時過ぎ。
ダラダラと暗い商店街を歩く。

いつもは自転車だけど、1ヵ月くらい前にパンクして、それ以来歩いて駅と家の間を歩いている。

自転車はまだ直していない。

車の免許は去年、大学進学が決まってすぐ取ったけどペーパーになりつつある。
俺は地下鉄と電車でどうにかなっているからだ。商店街の途中から横道に入ると住宅地となる。

しばらくは古い家ばっかりだが、だんだんチラホラと新しい家が見え始め、俺や八重島が通った小学校を過ぎるとマンションやアパートがいくつか立ち並ぶ景色となる。

そういえば俺の通う大学じゃないけど、駅の裏側に大学がある。
そこに通う学生はここらへんに一人暮しする人が多い。
だからたまにすごいうるさかったりする。

そんなアパートの近くにそびえ立つ17階のベージュのマンションが俺の住居。
カードキーをタッチしないと開いてくれない自動ドアが開く。

郵便のチェック。
全部「高松雄介様」。
だよね。

エレベーターのボタンを押す。
2つのうち右側のエレベーターのドアが開いた。

エレベーターを降りて右に3つ目がうち。

部屋に着くと、やっぱり俺一人。
「高松雄介」はまだ帰ってない。
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