男心と春の空
「アキナちゃん、そうだ、俺、連絡先知らないんだけど。」

突然の樋川の声に驚いて口の中の物を吐き出しそうになった。

アキナが困ったように笑いながら「ええ?」と反応する。

「教えて教えて。これ、これ俺のコード。あ、俺が読む方がいい?読むよ読むよ、どっちでもいいよ。」

樋川は女のことになると攻めがすごい。

俺は高校の時からずっと近くで見てきた。

そして大体の女を自分のものにしてきてるのも見てきた。

アキナも今、満更でもない顔してスマホを出している。

俺、アキナの連絡先なんて知らないけど。

俺は視線を隣の弥生ちゃんに戻す。

「美味しい?」
「うん、美味しい。」
「そっか。」

なんだ、この会話。

気持ちここにあらず、って感じ。

弥生ちゃんもかわいいのに、なんなんだろう。

なんでこんなにモヤモヤするんだろう。
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