男心と春の空
初体験
「何やってたの?」

次の日、会ったばかりの弥生ちゃんにすぐに問われた。

「ごめん、樋川と野山ん家で遊んでた。」

よくあることだし、慣れた調子で嘘をつく。

「ふうん。」

弥生ちゃんは少し怒ってるのか、さっさと歩き始めた。

「ごめん、ほんとごめん。」

追いかけながら謝る。

頭の中で、チラッと矢野英子のストッキングを脱がした場面が再生される。

まずいことしたかも。

今日は珍しく街デート。
弥生ちゃんが服を買いたいと言ったからだ。

なんとなくツンとした表情に見える弥生ちゃんの手をとった。

弥生ちゃんが振り返って俺の目を見る。

「怒ってるよね?」

確認の意味で聞く。

弥生ちゃんは少し下唇を突き出して黙り込んだ。

こういう時ってどうすればいいんだろう。

俺は手の中の弥生ちゃんの手を見る。
白くて小さくて細い手。

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