男心と春の空

高松雄介。

一緒に生活し始めたのは去年の春休みから。
俺が大学入学の準備をしていた頃だ。

まだその頃の俺は、これからもお母さんと二人でやっていくんだろうなぁ、なんて呑気に考えていた。

何も知らされていなかった。

お母さんは、俺が中二の時に離婚した。

理由は、お父さんの上手くいかないビジネスにお母さんを巻き込もうとしたから。

お母さんはずっと前からジュエリーデザイナーとして働いてて、店も持っていた。

でも売れ行きがいいわけではなかった。

そこでお父さんは自分の仕事と結び付けようとしたのだった。

だけどお母さんはただ「あたしがしたいのはそんなんじゃない」と言い張り、あっけなく離婚。

俺はちょうど高校受験で迷ってた時期でもあったわけで、私立なんて諦めるつもりでいた。

でもお母さんが「お父さんの後輩になりなさい。」と背中を押してくれて、俺は今の大学-永和大学-の附属高校を受けることができた。

お母さんは永和大学が永遠の憧れらしい。

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