男心と春の空
「なんか最近、やだ。」

弥生ちゃんが小さな声で呟いた。

「え?」
「最近の海くん、なんかやだ。」

やだ。

そう言われてしまうと、なんとも。

「やだって、どこが。」

弥生ちゃんが体をこっちに向ける。

「最近、海くん優しくない。」

そう言われて俺は繋がれた手に視線を落とす。

付き合ってもうすぐ三ヶ月。
初めての彼女。

正直、そう言われても仕方がない。

クセなのか、拗ねながらも俺の指で遊び始める弥生ちゃんの指。

「ねえ」
「ん?」
「私のこと、好き?」

弥生ちゃんはよくこの質問をしてくる。

「うん、好きだよ。」

弥生ちゃんの手が、俺の親指をスリスリする。

「じゃあ、今から海くん家行きたい。」

俺が視線を上げると、弥生ちゃんの目がしっかりと俺の目を捕まえてきた。

「え。服は。」
「服なんていい。」
「見ないの?」

弥生ちゃんはコクンと頷く。

俺はどこか仕方なく弥生ちゃんの手を引いて最寄駅に向かった。

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