男心と春の空
「いやー、金ないし、そういう気分でもなかったし。」

俺は何ともなく答えたつもりだったけど、アキナは突然ハッとしたように笑顔を消した。

「ごめん、そっか。たしかアレだよね・・・」
「え?」
「ごめん、はまちゃん家、大変だったんだよね。」

アキナはうちの親の事故について指してるようだ。

不意打ちな話題に逆に俺も戸惑う。

「ああ、ああ、そう。だよね、知ってるよね。」

俺はなるべく軽いテンションで笑顔で返す。

「私もニュースで知った時ビックリした。『aqua』大好きだったんだよね。」

アキナが少し寂しそうに呟いた、久しぶりに耳にするブランド。

俺はすごく疎くて、どのくらい人気だったのかも正直分からない。

アキナが好きだったなんて驚く。

「実は初めて買ったの、中三の時。はまちゃんのお母さんのブランドだって知って、お年玉掻き集めて一番安いネックレス買ったんだよ?マセガキだよね。」

アキナは照れ臭そうに教えてくれた。

「そうだったんだ。」

俺は軽く衝撃を受けて、それしか言えなかった。

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