男心と春の空
「えっ、早くない?」

思わず声が大きくなった。

アキナがすごく笑顔になって、樋川をツンツンした。

「あれ、すごーーく面白かったよねー。はまちゃんにも勧めようぜって。」

「え、なになに」と俺はテンション低く反応する。

樋川が「映画映画!」とテンション高く答えた。

「映画?」
「そー、AIロボットが世の中支配しちゃうの」

アキナの目がキラキラしてる。

「めっちゃ面白かったよ」

樋川もそう言って、後ろに座るアキナに「ね」と言う。

「映画か」

俺はそう呟くと、弥生ちゃんとの関係を思い出した。

最低なセックスで終わっていた。

「あれ超オススメ!今度彼女と観に行ったらいいよ!」

アキナがパッチリとした瞳で俺を見つめてきた。

「ああ、うん」

俺は適当にそう答えた。

「そういえば野山さ、バイト決まったの」

どうでもいい話題を樋川の向こうの野山にふっかける。

アキナと樋川は「今度これ観たい」なんて話で盛り上がってるからだ。

まさかこんなに関係が発展するなんて、全然思ってなかったよ。

野山が樋川越しに俺を見てきた。

「決まったよー靴屋」
「おーそっかーおめでとー」

俺は適当に返事をした。
自分から話題を振っておきながら。
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