男心と春の空
俺とアキナは並んで図書館に入る。
すごく静かだ。

図書館は2年前に建て替えられたばかりで、すごく新しい。

ガラス張りで、外の景観との一体感が楽しめる。
学校裏の森が背景にあって丁度いい。

本棚の並びも面白くて、たまに迷子になる。

変なところに突然椅子や机が置かれてて、どこで勉強してもいいデザインだ。

うちの建築学科と地域の建築家が共同で進めてきた大型プロジェクト「集いの場となる図書館〜図書館の使い方をデザインする〜」の完成形というやつで、大学自慢の建物だ。

売店も入ってるし、大学の博物館とも繋がってる。

よく一般の人も入ってて、俺も大学内で一番気に入っていた。

オープンキャンパスで来た時は工事中だったけど、入学してすぐに「入ってよかった」と思ったものだった。

ひとつひとつのテーブルや椅子が絶妙に配置されていて、近くに座っていてもお互い視界に入らないようになっている。

俺とアキナは一番窓際のテーブルに斜めに腰掛けた。

「この図書館、すごくいいよね」

アキナが俺の心を読むように言った。

「うん、すげー好き」

俺がそう言うとアキナの目が笑う。

「私もすごく好き」

思わずドキッとした。
本棚に仕切られた特別な空間に今二人でいる。

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