男心と春の空
雨の中、弥生ちゃんと二人残される。

俺は弥生ちゃんに歩み寄って傘を差す。

「ごめん」

かろうじて謝ることができた。

弥生ちゃんは黙り込んでる。

雨がまた一段と強くなってきた。
最悪だ。

「今からダメ?」

やっと弥生ちゃんの小さな声がした。

「え?」
「今から・・・」

弥生ちゃんが何を言わんとしてるのかは分かった。

俺はポリポリ頭を掻く。

「ごめん、もうそろそろ兄ちゃん帰ってくるし。」

少し強めの口調が出る。

弥生ちゃんが口をギュッと強く縛る。
そして俺の胸を叩いてきた。

「なんなの、バカ」

弥生ちゃんの小さなその声は雨の音に消えていく。

俺はちょっとくらい頭を撫でてあげたっていいのに、そんな器用なことはできず、ただ傘を差して叩かれ続けた。

最高の雨の日から一転、最悪な雨の日となった。
< 67 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop