男心と春の空
それはつらい恋
夏休み中はほとんどバイト三昧。
かなり稼げる。
別に使う予定はない。
俺の学費は親が遺してくれてるから。
すごく贅沢な学生生活を送れてる。
ちなみに弥生ちゃんとは連絡を取ってない。
正確に言えば、テスト期間中に「テストおつかれ!」と連絡が来たけど俺は一切返事をしてなかった。
あの雨の日のコンビニ以来、会う気にもなれない。
「ねえ、海くんのその服、クーラント?」
俺が仕事終わりに着替えて出たところで、一緒に終わった矢野英子が突然言ってきた。
「ああ、そうっす。兄ちゃんからお下がりでもらって。」
俺は少しドキッとしながら、高松雄介から貰ったTシャツを摘む。
ちなみに本人に向かって「兄ちゃん」なんて言ったことはない。
矢野英子は「かっこいいじゃん」と笑って褒めてくれた。
なぜか罪悪感を感じる。
「ありがとうございます」
矢野英子と視線を合わせられない。
「海くん、明日も遅いよね?」
「え?」
「飲みに行こ」
突然の矢野英子からの誘いだった。
ストッキング生足事件以来だ。
「ああ、いいっすよ。」
平然を装ってそう答えた。