男心と春の空
今日は意外と矢野英子は最後までしっかりしていた。
それでも俺のクーラントのシャツの裾をつかんで歩く。

不思議とドキドキしない。

「まだ飲み足りない。」

矢野英子は口を尖らせて言う。

「ええ?」
「ねえ、お酒買ってさ、うちで飲まない?」
「今からすか?」

俺が戸惑っていると、矢野英子は当然のように「うん」と言った。

俺と矢野英子はコンビニで適当に酒とつまみを買うと、そのまま矢野英子のアパートに向かった。

「おじゃましまーす。」

矢野英子の部屋に入る。

これも、あのストッキング生足事件以来だ。

1K。
真ん中にローテーブルがあって、ベッドがあって、よくある一人暮らしの部屋だ。
物が少ない。

ローテーブルにドカッと袋ごと買ってきた物を乗せる。

「はい、ほら、座って。」

矢野英子がペンペンと隣の位置を叩く。

俺はよそよそしく矢野英子の隣に腰を下ろす。

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