男心と春の空
「いや、今日は課題やりに来てるし。」

俺がそう答えると、樋川はカン!と音がするくらい強くキーを叩いて「おーわり」と言い放った。

パソコンをパタンと閉じながら、散らばってる資料をまとめてバックパックに詰め込んでいく。

最後にパソコンも詰め込むと、サクッと立ち上がった。

「じゃあ俺行くわ。」

ちょっと口角を上げてる。
だけど、いつもの樋川の元気がない。

少し圧倒されるように「おう」と片手をあげる。

樋川は野山に「この本借りてくな」と一言言ってテーブルの上にあった一冊の本を手に取ると、そのままサラリと出口にまっすぐ向かっていった。

少し呆然とする。

「樋川、なんかあったかな。」

野山に聞く。
野山に分かるわけがないか。

「恥ずかしいだけじゃない。」
「え、そう?」
「照れてるだけでしょ。」

野山ってなんでこう人の気持ちに鈍感なんだろう。
だから彼女に振られるんだよ。

野山がガサゴソとカバンを漁る。

「俺も飯買いに行く」

そう言って財布を手にしてやっと立ち上がった。

野山と二人、生協に向かう。
生協は学食のすぐ隣にある。

なんだろう、樋川。

俺が気にし過ぎてるだけなんだろうか。

アキナと昼飯。

胸のザワつきがなかなか落ち着かなくて、結局課題もほとんど進まなかった。
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