男心と春の空
「バック新しいの買おうかなぁ。でも来週髪切るし。服も欲しいなぁ。」

少し伸びた髪をいじりながら独り言を呟いた時、玄関のドアが開いて閉まる音がした。

帰ってきた。
足音が静かに響き、ドアが開いた。

「おぅ、おかえり。」

俺は振り向くこともなく声をかけた。

「おぅ。あ、ブースト買ったんだ。」

低く静かな声でそう返ってきた。

俺は照れ臭くなってBoomStockを閉じる。

一つ屋根の下に住む者が毎月載ってる雑誌を買っていること自体、恥ずかしい。

ちなみにブーストはBoomStockの略で、でもブーストと言うのも照れ臭くて、ちゃんと「ブームストック」と言うようにしてる。

「今月号つまんなくね?」

高松雄介が冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながら言った。

「普通。」

俺はそう言うと、さりげなく「課題やらなきゃ」と言ってBoomStockを手に取りリビングを後にした。

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