男心と春の空
突然だ。

「無理して俺といる必要ないし。海が自分で選べばいい。」

高松雄介の声に対して、セミの声だけがやたらとうるさい。
それでもしっかりと俺の耳に届いた言葉。

そっか、俺にはお父さんがいるんだ。

その選択肢を俺は全く考えていなかった。

高松雄介はずっと考えていたのかもしれない。
完全に俺が一人でに甘えて生きてたんだなあ。

「うん、そうだね。」

俺はそう言って墓に水を置いた。

たくさん飲んでね。
熱中症になるから。

真っ黒な墓石は火傷しそうなほどに熱くなっていた。

俺は、どうするんだろう。
どうしたいんだろう。

考えたこともなかった。

もう20歳。
成人なのに。
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