男心と春の空
部屋に入りノートパソコンの電源を入れ、立ち上がるまでの間にカバンをあさる。

1月のうちに出さなきゃいけない課題。

明日で1月は終わってしまう。

わざわざ学校まで提出するためだけに行かないといけない。

今時わざわざ紙で提出させるなんて時代遅れだろ。

春休み入る前に出しておけばよかったと後悔する。

カバンの中のファイルからプリントを見つけ、そこにある文字を見てハッとした。

急いでスマホを取って野山信吾の名前を探す。

電話をかけると暇なあいつはすぐ出た。

「何、どうした。」
「哲学で先生が指摘した箇所ってどこ?今初めてちゃんとプリント見てさ。」
「あの本あるじゃん。」
「『哲学のキーワード』?」
「そうそう、あの赤い本。」
「あれ、俺なくしたんだよね。」
「そうだ、この間言ってたね、お前。」

俺は念のため本棚を見る。

赤い本は見当たらない。
授業でまったく使ってなかったから、いつなくなったのかも分からない。

そもそもこの本棚にあったというイメージすらない。
買ってないのかも。

「俺、今からお前ん家行っていい?」
「あぁ、まぁ。いいけど。」

野山はぼんやりとしたトーンで答えてくれた。
< 9 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop