甘やかしてもいいですか?
1章

はじめまして

 「はぁ…。」
深いため息が肺の奥の方からこぼれる。長時間新幹線に乗っていたせいか、少しだけ酔ってしまって気分が悪い。おまけに首から下が凝り固まってしまっている。そんな私の様子とは裏腹に、外は暖かくて爽やかな風が吹いている。ニュースでは六分咲きか七分咲き忘れたが、そんな風に言われていた桜も、私の目には満開のように見える。
「ん、あれかな…?」
ここから少し離れた所に一軒の古びたアパートが見える。厳密に言うとアパートではなく、あさひ荘という今で言うところのシェアハウスに近い物件なんだとか。実際に自分で見て決めたわけではなく、お父さんの勧めで。
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