幸せにしたいのは君だけ
彼がホットミルクティーを渡してくれた。


「ありがとう」

「佳奈、敬語なくなってきたな」

「あっ……」

「そのほうが嬉しいから、そのままでいて」


ポンと私の頭を撫でながら、隣に座る。


「今日から佳奈は正式に俺の本気の恋人、だろ?」


確認するかのように言われて、頷く。


「よかった。否定されたらどうしようかと思った」

「まさか」

「それでも怖くなるんだ。すごく好きだから」


はっきり口にする、その目は真剣だった。


「圭太さんでも……怖くなるの?」


意外だった。

常に自信にあふれていて、なんでも手にしていそうな人なのに。

なにも怖いものなんてなさそうなのに。


「当り前だろ。好きな人に嫌われるのが一番怖い。今日だって佳奈に会って、ほかに好きな人ができたとか言われたらどうしようかと思ってた」


ほんの少し不機嫌そうに口にする。


「そんなことあるわけないのに」

「わからないだろ。それでなくても俺は日本にほとんどいないから不利だし」


頭を撫でていた手が移動して、肩をグッと引き寄せられる。

……私と同じ、なんだ。


広くてがっちりした肩にぽすんと頭を持たせかけながら、考えた。

初めて知った事実に胸の奥が熱くなる。

私だけが怖くて振り回されているのかと思っていた。
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