幸せにしたいのは君だけ
『きちんと将来を見据えての同居ですって説明するよ』


迷いなく言い切る声が耳に痛い。


「……そんな必要はないよ」

『なんで? 佳奈は俺との将来を考えられない?』


ほんの少し、確認する声が硬くなった気がする。


「考えられないとかじゃなくて……その、全部が唐突すぎて……」


そんなにも当たり前のように澪さんの話をするのに、どうして気持ちを伝えなかったの?

澪さんへの想いは吹っ切れてるの?


本当に口に出したい言葉を、心の奥に閉じ込める。


『ああ、そうか、ごめん。佳奈の気持ちも考えずに先走りすぎた』


あっさりと謝罪されて、後ろめたい気持ちでいっぱいになる。


……ごめんね。

私があなたの気持ちを煽っているのかもしれない。

私のせいであなたは無理やり前を向かざるを得ないのかもしれない。

でも、それでも私はあなたと一緒にいたい。

手を離したくないの。


「と、とにかく一緒に暮らす件については、両親に一度話してみるから」


誤魔化すように早口で告げる。


『わかった。でも無理はするなよ。なにかあったらすぐに言うこと。ああ、それと俺、気は短いほうだから覚えてて』


含みをもたせた言い方に、また鼓動が跳ねる。

結局、近日中には両親に話をすると半ば強制のような約束を取り付けられて、通話を終えた。
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