幸せにしたいのは君だけ
頬にそっと触れると、とても熱い。

嬉しくて幸せな報告をうけたはずなのに、なぜか不安が拭いきれない。

慣れない正座で足が痺れているはずなのに、その感覚がわからない。


もし、結婚式で澪さんを見つめる彼の表情を知らなかったら、もっと心が躍っただろうか。

同棲、という申し出に浮足立っただろうか。


彼の海外赴任期間が終了するだけで嬉しいのに、遠距離恋愛が終わるだけで幸せなのに。

同棲だなんて……思ってもみなかった。


彼の気持ちを疑うわけではないし、疑いたくはない。

けれど、こんなにトントン拍子で交際が進むのが怖い。


そういえば、圭太さんと私は、出会った頃はやりあっていたけれど、付き合うようになってからは喧嘩をしていない。

いつも私の気持ちを彼が先回りして汲んでくれているから。


不満なんてない。

順調さが怖いだなんて、千埜に話したらきっと笑われるだろう。


付き合って、ううん、ふたりで話すようになって三カ月ほどしか経っていない。

そんな状態で同棲なんて決めてしまっていいのだろうか。
 
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