幸せにしたいのは君だけ
お互いをよく知るためにともに暮らすのは、素敵だと思う。

でもどこか急ぎすぎている気がしてしまう。


あんなに素敵な男性に同棲を請われて躊躇うなんて馬鹿ね、ともうひとりの私が呆れたように囁いている。

都合の悪い部分には目をつむればいいのよ、と。


それに、私は圭太さんの立場にまだ気後れしている。

彼の仕事内容だってよく知らない。

どこまで本気で、私との将来を望んでくれているのだろう。


恋人のすべてを把握したいわけじゃない、管理したいわけじゃない。

でもいつも物事の結果ばかりで、過程を話してもらえていない気がする。


『こういう風に考えたからこの答えを出したんだ』というような話をしてもらった記憶はほとんどない。

いつも『こうなったから』『この答えだから』だけ。

……当事者のはずなのに、どこか蚊帳の外のような気がするのだ。


考えすぎなのかもしれない。

それでもどうしても忍び寄る不安を完全に払拭できなかった。
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