幸せにしたいのは君だけ
「……俺はそれでも伝えるべきだし、伝えてほしいと思う」

「それで好きな人に嫌われたら? 失ったら?」

「その程度で壊れるようなら、最初からうまくいかない運命なんだと思う」

「――どうして、そんな簡単に言い切れるの?」


この恋をすぐに諦められるというの?

……それは本気ではないから?

私をそこまで好きではないから?

私には――無理。

そこまで器用じゃない。


心が急速に冷えていく。

感情が凍り付きそうだ。

指先がどんどん冷たくなっていく。


「本音で向き合いもせず、我慢するだけの関係がうまくいくわけないだろ。嫌われるとかばかりを考えていたらなにも変わらない。そんなもの、お互いのためにならない」


もっともらしい辻褄のあった言葉。

まるで恋愛の模範解答だ。


「なあ、結局、佳奈はなにが気に入らないんだ?」


はあ、とまた、彼がひとつ重い息を吐いた。

サラサラの髪をかき上げ、疲れたように言われて胸が詰まった。


気に入らないとか、そんな話じゃない。

まるで子どもの癇癪かなにかのように言わないで。


「俺に不満があるから、連絡をとるのをやめたんだろ」


違うって言ってるのに。

なんで伝わらないの? 

なぜわかってくれないの?


――もう、限界だった。

私の心が悲鳴を上げる。
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