幸せにしたいのは君だけ
「どうして……そんな言い方をするの?」

「佳奈?」

「不満なんてない。ただ不安なの。それはおかしいの?」

「遠距離はもうすぐ解消される。一緒に住めばずっと一緒にいられる。それなのになにが不安なんだ? 急に連絡をとらなくなったり……理解できない」


かたちのよい眉が不機嫌そうにひそめられる。


「でも私が連絡をとらなくなっても、なんとも思わなかったでしょ? 心配じゃなかったでしょ?」

「は? なに言って……」

「だから、あんな物分かりのいい返事をしたんでしょ?」

「佳奈!」


違う、こんな言い方をしたいわけじゃない。

それ以上は言ってはいけない。

心の中でもうひとりの私が懸命に叫んでいる。


「……もし澪さんからのメールだったら、連絡をとれなくなったら、諦めなかった?」


言ってはいけないセリフだってわかっていた。

必死に押し込めてきた感情が噴き出す。


「どうして澪さんに告白しなかったの?」


震える唇が勝手に言葉を紡ぐ。

圭太さんが目を見開く。

整った面立ちが僅かに歪む。


聞いてはいけない質問だってわかっていた。

このセリフを口にしたらもう一緒にはいられないって理解していたのに――止められなかった。
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