幸せにしたいのは君だけ
佳奈はいつだってはっきりと意思表示をしてくる。

どんな時も真っ直ぐに向けられる目がなによりも好きだった。

一番最初に惹かれたのも、その挑むような目だった。


そんな佳奈が時折俺に寂しそうな、なにかを我慢しているような……それでいて不安そうな表情を見せるようになった。

それはいつもほんの一瞬で。

長いまつ毛に縁どられた、丸い目を瞬かせるくらいの短さ。


気になっていなかったわけじゃない。

気づかずにいたわけじゃない。


だが、遠距離恋愛が解消されたら大丈夫だろうと高をくくっていた。

正直、佳奈と離れて暮らす毎日に俺自身が限界に近かった。

佳奈を不安にさせないためにも、国内勤務に変わりたいと願い出たのはいわば建前で。

間違いなく自分のためだった。


同棲を言い出したのも俺がいつも彼女とともにいたいから。

どこかの――俺の知らない誰かに奪われないか不安だから。


彼女はとても魅力的だ。

どこか自分に無理をして、好みではなかった装いをやめた近頃は特に。

ふわりとはにかんだように頬を緩める表情が眩しくて可愛らしくて、いつも見惚れそうになるくらい。
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