幸せにしたいのは君だけ
――すべては俺のワガママだった。


一緒に暮らすようになれば、たくさん甘やかしたい。

腕の中に閉じ込めて離したくない。

自分がこんなにも狭量で余裕がない人間だとは思いもしなかった。


だからこそ、そんな自分の弱さやずるさ、心の狭さを彼女には知られたくないと思った。

年上の男としての精一杯の矜持だった。

せめて好きな女性の前ではカッコつけたい、小さなプライドだった。


心配性で心優しい恋人に負担をかけないように、下手な期待を持たせて悲しませないように。

そう思って、自身の行動については必要最低限しか話さなかった。

元々俺は自己完結で話を進めてしまう癖がある。


澪に『圭太はいつも、皆が理解しているかのように突然突拍子もない話をしてくるけど、私にはわからないよ。そもそもなんでいきなりそんな事態になったのか、経緯が不明すぎて逆に不安になるんだけど』と、文句を言われたのは一度や二度ではない。

その忠告も、頭の片隅に残っていたはずだったのに。


俺はどこで、なにを、間違えたんだろうか。


幼馴染みにはよく、人の感情の機微には敏いと言われてきたし、自分でもその自覚はあった。

それなのに一番大切にしたい人の心が今、まったく読めない。
< 157 / 210 >

この作品をシェア

pagetop