幸せにしたいのは君だけ
「いや、でも俺と澪はただの幼馴染みで……」

「ああ。澪もずっとそう言い続けていたよ。俺だって頭では理解してるんだ。でもな、お前を見る澪の目は安心しきっていて、嬉しそうで、それだけで負けたような気がしていた」


この人がそんな思いを抱いているとは考えもしなかった。

いや、嫉妬されているだろうなとは薄々感じていた。

だけどそれがそんなにも根深いものだとは思ってもみなかった。


俺からしてみれば、副社長は恋愛関係に疎い幼馴染みが初めて本気の恋をした相手で。

それだけでも奇跡に近いと思っていたくらいだ。

そこに俺が入りこむ隙なんてまったくないと感じていた。

入りこむ気もさらさらなかったが。


俺を見る澪の目は、昔から変わらない。

幼馴染みとしての関係、ただそれだけだ。


「澪は“圭太に恋愛感情はない”と言い切ってくれた。そして、俺がお前に嫉妬する気持ちを正直に話すと理解してくれた。だから今、ある程度は冷静でいられる」

「ある程度って……」

「愛する妻に近づく男に嫉妬するのは当然だ。お前だってそうだろう?」


納得がいかない気がするが、頷く。


「――だが、三浦さんはそうじゃない」

「どういう意味ですか?」

「お前は正式に付き合うようになってから、澪への気持ちは恋愛感情ではないと三浦さんに言い切ったか? 澪との関係についてきちんと話したか? 彼女が澪の存在にどれだけ不安を抱いているか確認したか?」

「……していません」
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