幸せにしたいのは君だけ
「私は、周りにも自分にも正直で、真っ直ぐな佳奈ちゃんが大好きよ。覚えてる? 恋愛は自由ですよって佳奈ちゃんが言ってくれた言葉」


そんなセリフを私が? 

どれだけ無鉄砲というか考えなしと言うか……今の私にはとてもではないが口にできない。


「すみません……きっと深く考えずに言ってしまったんだと思います……」


恐るべし、昔の自分。

恥ずかしすぎる。


「なぜ? 私はその言葉に背中を押してもらったの。立場の違いや自分の気持ち、遥さんの気持ちに悩んでいた時だったから、ものすごく心に響いたの」

「え……?」

「私は、あれこれ難しく考えすぎなのかなって思ったの。そんな風にはっきり言い切れる、佳奈ちゃんの真っ直ぐさが、羨ましくて眩しかったわ」


そう言って澪さんはにっこりと口角を上げる。


「誰だって、自分以外の人を羨ましく思ったりするわ。そんなの当り前よ。特にそれが好きな人に近い人なら尚更。ただね、さっきも言ったけれど佳奈ちゃんは大きな誤解をしている。まずはそれを説明させてほしいの」


誤解?


「第一に、圭太は私に恋愛感情はまったく抱いていないわ。もちろん私も。幼馴染みとして長い時間をともに過ごしてきたし、ずっと一緒に成長してきたけれど、そういう関係には一度もならなかった。遥さんとの仲を取り持ってくれたくらいだもの」

「それは、澪さんが大事だから……」
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