幸せにしたいのは君だけ
「圭太に以前言われたの。この言葉を佳奈ちゃんに贈るわ」


胸の奥がじんと熱くなった。


「遥さんを好きになる前の私だったらきっと、この意味を理解できなかった。でも今の佳奈ちゃんは理解できるでしょう? まあ、言った本人が原因っていうのが腹立たしいけど」

「だけど……私、酷い言い方をしてしまいました」

「そんなの、それこそお互い様よ。そもそも、圭太が肝心な話をきちんとしないから、拗れてしまったんだから」

「どういう意味ですか?」

「詳しい話は幼馴染みに直接聞いて。それで思い切り怒ってやればいいの。でもね、圭太は大事な人にウソは絶対につかない。佳奈ちゃんへの想い、これまで伝えた気持ちにウソはひとつもないわ。あんなに幸せそうな圭太、初めて見たんだから」


いたずらっ子のように澪さんが目を輝かせる。


「ひとつ教えてあげる。この間、日向不動産を訪問したのも半分は圭太に頼まれたからなの。佳奈ちゃんの様子を見て来てほしいって懇願されてね。幼馴染みのあんなに焦った姿を見た記憶はないわ。いつもどこか冷めていて、腹が立つくらいに頭が切れるのに」


ウソでしょう? 

本当に? 

……私を気にかけてくれていたの?
< 175 / 210 >

この作品をシェア

pagetop