幸せにしたいのは君だけ
「両親は明後日の夜に帰国予定だから問題ないよ。まあ、早く佳奈を紹介したかったから残念だけど。それは近いうちに」

「えっ?」

「俺の最愛の人ですって」


さらりと自然に言われて、ひゅっと息を吞んだ。

ああ、もうこの人は。

どこまで私を喜ばせてくれるんだろう。

幸せすぎて泣きたくなる。


「佳奈、そんな可愛い顔しないで。話をする理性を保つのに必死だから」

「か、可愛くないっ……!」

「可愛いよ。佳奈は俺の一番大事な宝物だから」


花が綻ぶように綺麗な笑顔で私を見つめる。

そのすべてが愛しくて胸が痛い。

じわりと滲んだ涙を、長い指がそっと掬う。


「すぐ泣く」

「泣かせてるのは誰……!」

「俺だな」


片眉を上げるその仕草が妙に色気があって、直視できない。

心臓が壊れそうだ。

思わず目を逸らすとクックッと声が漏れてくる。


「俺の部屋、こっち」


そう言って、何事もなかったかのように私の手を引いて歩き出す。


「あ、あのっ、部屋に入っていいの?」

「なんで?」

「だって、その……」


お手伝いさんがいらっしゃるだろうし、話をするだけだけどなんだか気恥ずかしい。


「最近は日中だけ来てくれてるから。ちなみに明日は休み」


私の胸中を読んだかのように言われてしまう。


「そ、そう……」

「本当、佳奈はそういうところ律義だな」

「普通、だと思うけど」

「そんな風に言える佳奈が好きだよ」


……もう、どれだけ好きって言うのよ!


恥ずかしくて彼を直視できない。
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