幸せにしたいのは君だけ
「そのネックレスをつけてくれてありがとう。澪の家で見て、佳奈の気持ちにまだ間に合うかなって思ったんだ」

「……もらった日から、毎日つけてるよ。私の宝物だから。圭太さんもネクタイを使ってくれてありがとう」

「佳奈が俺にくれたものだからな。大切にしてるよ。なあ佳奈、……昔話をしていいか?
澪との関係についてきちんと説明させてほしい」


優しい目に見つめられて頷く。

圭太さんがグッと私の肩を自身に抱き寄せた。

髪を撫でる手が心地よい。


「俺と岩瀬兄妹は本当の兄妹のように育ったんだ」


それは澪さんと圭太さんの幼い頃の話だった。

経営者でもあるご両親は忙しく、ひとり息子の圭太さんはこの広いお屋敷のような家で、ひとり過ごす日が多かったそうだ。

後継者としての未来に不満はなく、両親からの愛情を疑いはしなかったが、やはり寂しさは日増しに募っていったという。


「そんな時、澪に出会ったんだ。昔から変なところは頑固なくせに世話焼きで心配症で。兄妹揃って俺の面倒をみてくれた。特に澪は自分だって弱いのに俺を守ろうとしてくれた」


幼い頃の圭太さんは泣き虫だったらしい。

今の完璧すぎる姿からは想像できない。


「だから岩瀬兄妹には心から感謝している。あのふたりに出会わなかったら、きっと今の俺はいなかったと思うから。だから俺にとって澪、というか岩瀬兄妹は特別な存在なんだ。でもそれは決して恋愛感情とかそういうものじゃない」
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