幸せにしたいのは君だけ
幼な心に、恩返しではないけれど将来澪さんを守ろうと決めたらしい。

それからずっと一緒に育ってきたのだという。


「……なんとなくわかるよ。圭太さん、律義だもんね」


私なんかより、よっぽど。

だって、この人は本当に優しくて、思いやりにあふれている。

受けた恩を返そうと、お姫様を守る騎士よろしくずっと付き添って見守ってきたのだろう。

そう思うと、澪さんをよく迎えに来ていた頃の彼の姿にも納得してしまう。


「そんなつもりはないよ。俺の淡い幼い初恋の相手は、きっと澪だったと思う。でもそれだけで、成長するにつれてそんな感情は抱かなくなった。どちらかというと妹、みたいな気持ちで接してた」

「うん、澪さんも同じような話をしてくれたの。圭太さんは家族みたいなものだって。一緒に働いている時も、圭太さんに恋愛感情はないって言ってた」

「ああ、そうだな。それなのに、なんで俺が澪を好きだなんて思ったんだ?」

「結婚式の時に、圭太さんがすごく切ない目で澪さんを見つめていたから……」


それは鮮やかで胸が痛い記憶。

あの時はこの人をこんなにも好きになるなんて思わなかった。

一途に愛される澪さんが羨ましくて、なにより圭太さんの心情を想うと胸が軋んだ。
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