幸せにしたいのは君だけ
「先輩にも、この日の態度を誤解されているって言われたんだけど、俺、そんな表情してた?」

「うん……」

「あの日は……凪さんみたいな気持ちだったんだ。幼馴染みの晴れ姿が嬉しくて、ホッとしてそれでいて少し寂しいような……ごめん、あんまり聞きたくないよな」

「ううん、ちゃんと聞きたい。それに、圭太さんが言いたい気持ちはなんとなくわかるから」


きっとこの日はこの人なりのケジメで、区切りの日だったんだろう。


「……澪が心から愛する人を見つけて、遥さんに愛されて……バトンを渡せた気がしたんだ。俺の役目はもう終わったんだって」

「そっか……」

「あの日はそんな清々しい気持ちで澪を見てた。だから未練とか恋慕とかそういうものじゃない」


私を見つめて、きっぱり言い切る彼の目にウソはなかった。


「うん、今ならわかる」

「ありがとう。あの日、誓ったんだ。俺もいつか本気で愛する人を見つけるって。そして、見つけた」


真っ直ぐな眼差しが私を捉えて離さない。


「焼き鳥屋で会った日、佳奈の真っ直ぐな物言いにどうしようもなく心が揺さぶられた」

「……なんで?」


意味がわからない。

どう考えても悪口や批判としか思えない言い方をしていたのに……。
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