幸せにしたいのは君だけ
「こんなに近くにいたのに、なんでもっと早く気づかなかったんだろうって焦って、自分のものにしたくて必死だった。佳奈が誰かに奪われたらと思うと、不安でたまらなかった。みっともないってわかっていても、どうしても佳奈を離したくなかった」

「本当に……?」

「あの焼き鳥屋で俺は、生まれて初めて本当の恋をしたんだ」


幸せすぎる告白に心が揺さぶられる。

止まったはずの涙がどんどんあふれだす。


「……泣き虫」

「圭太さんのせい」

「うん」


骨ばった指で涙を拭いながら、私の髪に優しくキスを落とす。

その仕草に心がキュッと締めつけられる。


「すぐに澪と先輩に相談して……協力を頼んだんだ。特に澪は佳奈を大事に思っているから、散々本気なのか、泣かせたら許さないと迫られた」


大好きな先輩の心遣いに胸が熱くなった。


「じゃあ、クリスマスは……?」

「あれは、副社長に突然任された仕事のせいだったんだ」

「年末前なのに?」

「佳奈、遠距離恋愛無理だって言ってただろ」


そう言ってフイと視線を逸らす。

心なしか耳が赤い。


「……国内勤務への異動願を出してたんだ。ただ進行中のプロジェクトがあって、落ち着くまで帰国は難しいって言われてたんだ。それなのに仕事が増えて、調整の必要が出てきて、急遽帰国したんだ」


私の、ため?

私が遠距離恋愛を無理だって言ったから? 

あんな些細なひと言を覚えていてくれたの? 
< 190 / 210 >

この作品をシェア

pagetop