幸せにしたいのは君だけ
「……圭太さん、私って澪さんに似てる?」

「全然。なんで?」


即答されて笑いたくなると同時に、情けなくなった。

すべてはこんなにも単純だったんだ。

私は自分で糸を複雑に絡めてぐちゃぐちゃにしていた。


「澪さんと私が似てるって後輩に言われたの。外見とかじゃなくて仕草や雰囲気が」

「そうか? 澪は頑固で無頓着だし……佳奈とは全然違うだろ。あ、でも真っ直ぐなところは似てると言えば似てるか?」


うーん、と首を傾げる姿に笑いたくなる。

考えもしなかったという様子だ。


「……それで不安だったの。私を好きって言ってくれたのが……」

「澪の身代わりだとでも思った?」


私の後を引き取った彼に頷く。

一瞬だけ綺麗な二重の目に苦痛の色が浮かぶ。


「本当につらい思いをさせてごめん。誓って言うけど、佳奈を澪の身代わりだとか、似ているから好きになったとか思ったことは一度もない。なにより身代わりで誰かを好きになんてなれない」


真剣な声ではっきりと言い切られて、再び頷く。


「うん。今はもちろんわかってるし、信じてる。でもあの時は色々な出来事がごちゃまぜになって混乱して、不安でどうしようもなかったの」

「ごめん、な」


苦しそうな表情を浮かべて、圭太さんは私の髪やこめかみ、瞼にキスを落とす。

その感触と体温が心地よくて、嬉しさで胸が震えた。
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