幸せにしたいのは君だけ
「君と話をしたいと思ってたから」

「は……い?」


聞き間違えだろうか? 

話がしたい? 

なんで?


「なんで、とか思ってないか?」

「えっ」

「ハハッ、本当、思考が全部顔に出てるな。正直すぎだろ」


明るい笑い声に、慌てて頬を両手で隠す。

三日月形に緩められた目が思いのほか優しくて、心がざわめく。


……この人とこんなに話したのは初めてだ。


「澪にずっと三浦さんの話を聞いていたから、興味はあったんだ。でも昨夜、俺の話をしている声を聞いて、その気持ちがもっと大きくなった」

「意味がわかりません」

「俺に疑問があったんだろ?」

「いえ、でもあれは……」

「なんで? せっかくの機会だし聞いてくれていいよ。君になら怒りもしないし、正直に答える」


面白がるように口角を上げる姿がなんだか腹立たしい。

なぜか試されているような気になる。


「……どうして澪さんと副社長を結び付けたんですか?」

「いきなり直球を投げてくるね……それは、なんで澪と付き合わなかったかって意味?」

「そんなところです」

「さっきも言ったけど、俺は澪にそういう感情は抱いてないんだよ。大切な存在なのは間違いないけど、それは家族愛みたいなものだから」


――だったらなぜ、結婚式であんなに切ない目をしていたのだろう。

この人は強がっているだけではないのだろうか。

どうしてもそう考えてしまう。
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