幸せにしたいのは君だけ
現代ではありえないようなシンデレラストーリーに、千埜をはじめとした独身女性は騒然となった。

もちろん私もそのひとりだ。


結婚相手の九重(ここのえ)副社長は、言わずと知れた九重グループの御曹司。

容姿端麗、頭脳明晰で世の女性たちから羨望の的だった。


「副社長といえば、女性を敬遠していることで有名だったのにね。どうやったらそんな難攻不落の王子様と結婚できるんだろ」


カランとグラスに残っていた氷がとける音がした。

お酒が飲めない私は、ほんのり赤く染まった親友の頬を見つめて返答する。


「さあ……運命だったんじゃない?」


それ以外に表現のしようがない。

なんせ澪さんは結婚願望がまったくない人で、合コンの誘いも片っ端から断っていたのだから。


「そんな運命が待ってるなら、仕事も頑張るのに……ああ、私も彼氏がほしい!」

「この間、里紗(りさ)に紹介してもらった商社マンの男性はどうしたのよ?」

「脈なし。“紺野(こんの)さんには僕よりずっと似合う人がいます”だって」

「意外。ふたりで年末にはスノボに行くって言ってなかった? 何回か食事にだって行ってたのに」
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