幸せにしたいのは君だけ
「何度も言ってるけど、佐久間さんは澪さんの幼馴染みなの。後輩の私とはただの顔見知り程度の関係よ」


早苗ちゃんは、澪さんとあまり面識がない。


「それでも、名前を覚えてもらえてるわけでしょう? 羨ましすぎです! 私なら自慢しちゃいますよ。それに先輩はモテるからいいじゃないですか」

「……モテないわよ」

「そう思ってるのは、先輩だけですよ。それに先輩って……うーん。誰かに似てますよね」

「いきなり、なんの話よ。そんなの、言われた経験ないわよ」

「芸能人とかじゃなくて、もっと身近な人なんですけど……ああ、思い出せないです」

「勘違いよ。ほら、おしゃべりしていないで、ちゃんと正面を向いて。そろそろ営業課のお客様が来社される時間よ」


はい、と素直に返事する後輩。

その後、総務課から届いた備品を受け取りに来てほしいと連絡が入った。

今は早苗ちゃんのほかにも受付担当者がいるし、なによりロビー内は混雑していない。


「早苗ちゃん、ちょっと備品を受け取りに行ってくるね」

「はい、わかりました」


後輩に見送られながら、エレベーターホールに向かう。

五階で降り、総務課で備品を受け取る。
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