幸せにしたいのは君だけ
午後七時前。

会社から二駅乗り継いだ場所にある、オシャレな雰囲気のイタリアンダイニングバー。

予約をしてくれたのは先方だという。


広めの個室に落ち着いた光の間接照明、ゆったりしたBGM。

美味しそうな料理がテーブルに並ぶ。

カチャカチャとカトラリーを扱う音が心地よく響く。


目の前には三人のスーツ姿の男性。

皆、身体にぴったりしたスーツを着こなし、優雅な雰囲気を漂わせている。

全員同い年だそうだが、もっと若く見える。


きっと一般的にはイケメンと呼ばれる男性たちなのだろうが、どうしてか、まったく心惹かれない。

今までの私なら、きっと目の前の男性に笑顔を振りまいて、色々な質問を繰り出していたはずなのに。

今はただ、千埜や千埜と同じ営業課の同期が話しているのを黙って聞いているだけだ。


「――三浦さん、ほかになにか飲む?」


ふいに正面の男性から声をかけられた。

彼は千埜の友人で、益岡(ますおか)さんという。

大きな目はカッコいいというより、どこかあどけない印象を与える。


「あ、いえ……大丈夫です」

「お酒、苦手なの?」


ノンアルコールカクテルを飲んでいる私に、柔らかな口調で話しかけてくれる。


「ええ、全然飲めなくて」

「へえ、意外。飲めそうなのに」

「よく言われます。千埜のほうが飲めなさそうって」

「だよね、あいつは本当に強いから。多分、俺より飲めるよ」
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