幸せにしたいのは君だけ
「ちょっと、佳奈。どうなってるのよ?」


テーブルから少し離れた場所にまとめてあった荷物を押しつけながら、小声で親友が囁く。

この距離ではぎりぎり佐久間さんに声は届かない。


彼は周囲の男性メンバーになにやら話しかけていた。

この状況で穏やかにほかの参加者と話ができる、その度胸に脱帽する。


「私にも、なにがなんだか……」

「とにかく、今日はいいから帰りなさいよ。無理強いしちゃったのは私だし。後のことは任せてくれたらいいから」

「ごめん……」

「ううん、その代わり後できっちり、全部報告してよ? なんで“結婚したい男性社員”上位の男性と親密になっているのか」

「親密って……そんなんじゃないから。どちらかというと嫌われているんだって」

「なに言ってるのよ? 嫌いな女子を、わざわざ合コンに乗り込んで迎えに来るわけないでしょ。ここ個室よ? 入ってくるの、相当勇気いると思うけど。しかも、佳奈を気に入ってる益岡だって目の前にいたんだから」

「……ごめん」

「だから謝らなくていいの。益岡には適当に言っておくから、ね? そもそも佳奈の反応見てたら、益岡に望みがないのは一目瞭然だったから、気にしなくていいわよ」
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