幸せにしたいのは君だけ
そう、千埜のデートを優先していたためにここ一カ月は女子会が延期になっていた。

総務課受付担当の私と、営業課所属の親友との退社時間は、なかなか合いにくい。

残業も多く、忙しい部署だが、仕事好きで物おじしない性格の彼女にはピッタリの職場だと思う。


「別れた恋人が忘れられないんだって」

「それは……どうしようもないね」

「でしょ。誰かを好きな気持ちは無理やり変えられるものでもないし」


そう言って、親友はビールをぐっと飲み干す。

明るめの茶色のショートカットの頭が軽く揺れる。


「そういう佳奈はどうなの? 結婚式で素敵な出会いはなかったの? 天下の九重グループ御曹司の結婚式なんだから、それはそれは素敵な独身男性がいっぱいだったんじゃない?」

「……どうだろ。なんか最近はそういうの、あんまり考えなくなったんだよね」


つい最近まで合コンにもよく参加していたし、素敵な男性を紹介してくださいと方々に声をかけていた。

多くの男性たちに気に入ってもらえるような服装や化粧、髪形も研究して、日々気を遣っていた。

条件のよい、素敵な男性と結婚したいとそれだけを願ってやまなかった。
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