幸せにしたいのは君だけ
「なのに、なんで参加してるんだ?」

「親友に以前から約束していたので、仕方なかったんです」

「行きたくないのに? 本当、君は変なところで義理堅いな」

「余計なお世話です。もう、離してください。なんなんですか? 突然やってきて、いきなりお説教?」


再び胸を押すが、いっこうに腕は緩まない。


「まさか。大事な人が変な男にひっかかったら危ないと思って、助けに来ただけだよ」

「……意味がわからないんですけど。そもそも佐久間さん、私を嫌ってますよね? なのに、なんでこんな真似をするんですか? 嫌がらせ?」


腕の中からキッと、頭上の整った面差しを睨む。


「そんなに暇に見えるか?」


ああ、もう。

なんでこの人の返答はいつもこう腹立たしいのだろう。

喧嘩を売られているようにしか思えない。


「そもそも俺は、嫌いだなんてひと言も言ってないよな? むしろ気に入ってるよ。君ほど面白くて、可愛い人はいない」


耳に飛び込んできた言葉が信じられず、瞬きを繰り返す。

面白い? 

可愛い?


「冗談を言わないでください!」

「本気。そうでなきゃ、わざわざ合コンに乗り込んでさらったりしない。君の正面に座っていた男性は、明らかに君を気に入っていたみたいだしね」


白い歯を見せるこの人は本当にあの佐久間さんだろうか?

皆から紳士だとあれほど噂されている人とは思えない。
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