幸せにしたいのは君だけ
「……性格、悪くないですか?」


相変わらず私を腕に抱いたまま、離してくれない強引さもなにもかもが意外すぎる。


「逆に、俺がどんな性格だと思っていたのか、聞きたいね」

「……誰に対しても優しくて穏やかで面倒見がよくて、めったに怒らない」


なにより幼馴染みを大事にしている、と喉元まで出かかった言葉は必死に呑みこむ。


「誰に対しても、ってところが違うな。自分が好意を抱く相手限定」

「……だから私には意地悪ばかりするんですね」

「なんで君は、そう斜め上の解釈ばかりするんだ? さっき言わなかったか? 俺は君を気に入ってるんだよ、とても」

「どこが、です?」


この扱いで、そう思える女性がいたらお目にかかりたい。

私はそこまで気楽な考えはもてない。


「気は強いほうなんだろうけど、義理堅くて自分の気持ちに正直で。君は俺から見たらものすごく可愛い。他の男には絶対譲りたくない」


一気に全身が熱くなる。

無意識に暴れ出した鼓動がうるさくて、彼に聞こえるのではないかと心配してしまう。


なにを言い出すの?

こんなの、まるで告白みたいだ。

ありえない。

動揺しちゃダメ。


この人は澪さんの大事な幼馴染み。

憧れても、恋焦がれても、この人の心の奥にはずっとたったひとりの女性が住んでいる。

その人の存在に私は一生敵わない。


そもそもこんな極上の男性に恋なんてしないし、惹かれたりしない。

自分の立ち位置くらい、この年齢になったら嫌というほどわかっている。
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