幸せにしたいのは君だけ
「探し方を間違えているのかもしれないし、そもそも君自身が自分の魅力に気づいていない場合もあるだろ?」

「でも……そこに佐久間さんのメリットってあります?」

「俺は俺で、恋の相手を君のアドバイスを受けながら探せる。これ以上のメリットはないけど?」

「私のアドバイスなんて必要ですか?」

「必要だよ。君みたいに、素直に自分の感情を伝えてくれる女性はいないから」

「……澪さんは?」

「人妻に頼るわけにいかないだろ? そもそも、副社長がいい顔をしない」

「……そうですね、わかりました。協力します」

「よかった。じゃあこれからよろしく」

「よ、よろしくお願いします」

「じゃあ手始めに俺たちがお互いを知ることから始めようか? まずは連絡先を交換して……」


言うが早いか、自身のスマートフォンをスーツの胸ポケットから取り出す。

視線で促されて、私もスマートフォンを手にする。

お互いの連絡先を交換し終えると、再び彼が口を開く。


「次は呼び方だな」

「呼び方、ですか?」


別にそのままでいいのでは、と言いかけたその時。


「――佳奈」


ハチミツのように甘い声が私の名を呼んだ。

トクン、と鼓動がひときわ大きな音を立てた。

至近距離から聞こえる低音が、私の心を揺さぶる。
< 46 / 210 >

この作品をシェア

pagetop