幸せにしたいのは君だけ
ぽつりとこぼれるのは私の脆い部分。

ずっと抱え続けていた本心。


『佳奈は強いから、少し離れていても平気だろ』

『しっかりしているから、寂しくなんかないだろ』


過去の彼氏にはよく言われていた。

平気なんかじゃない。

だけど重荷にはなりたくないし、好きな相手が打ち込んでいるものや大事にしている事柄の邪魔をしたくなかった。


だから言えなかった。

そばにいてほしいと。

会いたいと。


相手の気持ちを優先するのが、聞きわけがいいのが、大人の素敵な女性だと思ってきた。

でもいつもどこか自分の気持ちには無理をしていた。

……だから関係が長続きしないのかもしれない。


「重いんでしょうね、私の考え方って」

「俺はそうは思わないけど。きちんと正面から向き合いたいってことだろ? わけのわからないワガママや理想を押しつけるより、いいんじゃないか」


なんでもないように返された言葉に、胸の奥がきゅうっと締めつけられた。


どうして、わかってくれるの?

なんで否定しないの。

なぜ適当に流さないの。


理想の男性像や好きなタイプについてはたくさんの人と話してきた。

でもこんな風に真剣に受けとめてくれる人はいなかった。

それも異性で。


本当にこの人は意外性に満ちている。
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